大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和44年(ワ)6882号 判決 1973年10月23日

主文

1  被告は原告両名に対し各金四〇二万九、五八〇円および各内金三六七万九、五八〇円に対する昭和四四年二月一六日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を各支払え。

2  原告両名のその余の請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は、これを五分し、その一を原告両名の、その余を被告の各負担とする。

4  この判決は主文第1項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告ら―請求の趣旨

「被告は原告らに対し各五四〇万円および内五〇五万円に対する昭和四四年二月一六日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言。

二  被告―答弁

「原告らの各請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決。

第二当事者の主張

一  原告ら―請求原因

(一)  訴外畠山一雄(以下畠山という。)は、昭和四四年二月一五日午後九時二五分頃大型貨物自動車(千一せ五六七五号、以下被告車という。)を運転し、通称青梅街道を杉並区荻窪方面から新宿区柏木方面に向け進行中、東京都中野区中央一丁目一番一号先路上において、折から対向して来た亡溝口義人(以下義人という。)運転の普通乗用自動車(練馬五ね七〇七〇号、以下原告車という。)に正面衝突し、よつて義人をして全身打撲、頭蓋骨骨折にもとづく脳挫傷により、その場において死亡させた。

(二)  被告は、被告車を所有し、自己のため運行の用に供していたものであるから、自賠法三条により原告らの損害を賠償する責任がある。

(三)  (一)項記載の交通事故(以下本件事故という。)により、義人および原告両名が受けた損害はつぎのとおりである。

1 義人の得べかりし利益の喪失による損害八七八万一、八七七円

義人は、本件事故当時、東京日産自動車販売株式会社中央営業所所属販売員根岸長三郎の許で販売助手をしていた者であるが、昭和四三年一月より同年一二月までの一年間に給与および販売手当として合計六九万七、〇〇〇円の支払を受けた。

そして、昭和四二年度における全国の勤労者世帯の一ケ月間の平均消費支出額は五万八、七六三円で、その平均世帯人数は四人であるから、これを世帯主、妻、子供二人とみて、その消費単位指数を世帯主が一、妻が〇・八、子供一人が〇・四とすると世帯主本人の生活費は月額二万二、六〇一円となる。これが義人の一ケ月間の生活費であるとみるのが相当であるから、その年間生活費は二七万一、二一二円で、これを前記年間収入から控除した四二万五、七八八円が義人の一年間の実収入である。

義人は、昭和一七年四月三日生で、死亡当時満二六才の健康体であつたので、以後の就労可能年数は三七年とみられ、ホフマン式計算法によつて民法所定の年五分の割合による中間利息を控除した八七八万一、八七七円が事故当時一時に請求し得べきその利益喪失による損害額となる。

原告溝口勝見は義人の父、原告溝口フジエはその母として法定相続分にしたがつて義人の損害賠償請求額の各二分の一の四三九万〇、九三八円を相続により取得した。

2 被害者義人の葬儀関係費用

原告らは、義人の葬儀関係費用としてつぎのとおり合計三二万八、三一〇円を支出し、これを平等に負担したので、各一六万四、一五五円の損害を蒙つた。

(1) 死亡直後東京都杉並区堀ノ内所在の火葬場内の平合家を借り受けて葬儀を営んだが、その費用一六万九、八一〇円。

(2) その後福岡県田川市内の原告らの居宅(義人の生家)で改めて親族、近隣者の間で葬儀を営み、その際の費用五万円。

(3) 右の東京および田川市における葬儀ならびに遺骨引取等のため、遺族(原告両名および義人の妹二名ならびに叔父毛利福松)の九州・東京間の往復旅費一〇万八、五〇〇円。

3 慰藉料

原告らには、本件事故当時義人のほか、長女美代子(当時二二才)、次女京子(当時一九才)の三人の子があつたが、義人が唯一の男子であり、性格も温厚で日常生活や勤務成績も良好であつたので、同人を跡取息子として、老後の柱と頼んでいたものであつて、本件事故で同人が死亡したことによつて原告らが受けた精神的打撃は極めて甚大であり、その慰藉料は各二〇〇万円が相当である。

4 原告らの以上の損害賠償債権を合算すれば、それぞれ六五五万五、〇九三円となるが、原告らは、損害の填補として自賠責保険より三〇〇万円を受領したから、これを折半して右損害額から差引くと、それぞれ五〇五万五、〇九三円となる。

5 原告らは、被告が本件事故による損害賠償につき、誠意を示さないので、やむなく弁護士である原告代理人に対し、被告に対する本件損害賠償請求訴訟を委任し、これについて原告らは各三五万円を第一審判決言渡と同時に弁護士費用としてそれぞれ支払う旨約し、同額の債務を負うに至つたが、右は本件事故により通常生ずべき損害である。

(四)  よつて、原告両名は、それぞれ前項4および5の合算額五四〇万円(一万円未満切捨)および右金額から同5の弁護士費用を控除した残額五〇五万円に対し、本件事故発生日の翌日である昭和四四年二月一六日より支払済に至るまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  被告―請求原因に対する認否

請求原因(一)および(二)項の事実は認め、(三)項の事実中、4の原告らが自賠責保険より三〇〇万円を受領したことは認め、その余は不知。

三  被告―抗弁

畠山は、被告車を毎時約四五キロメートルの速度で運転して本件事故現場にさしかかつたところ、対向車線上を毎時約八〇キロメートルの速度で走行してきた原告車が突然中央線を越えて被告車の走行車線に進入してきたために本件事故が発生したのであり、右事故は、専ら原告車を運転していた義人の過失によつて発生したものであり、かつ、被告車には構造上の欠陥または機能の障害がなかつたから被告は免責されるべきである。

四  原告ら―抗弁に対する認否

抗弁事実中、義人に過失があつたことは争い、被告車に構造上の欠陥または機能の障害がなかつたことは不知。

第三証拠関係〔略〕

理由

一  請求原因(一)項記載のとおり本件事故が発生し、義人が死亡したこと、被告が被告車を自己のため運行の用に供していたことは当事者間に争いがない。

二  そこで、被告の免責の抗弁について判断する。

〔証拠略〕によれば、事故発生当時の本件現場(以下特にことわらない限り、請求原因(一)項記載の事故発生地を指す。)付近の各状況はつぎのとおりであると認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

1  青梅街道は、現場付近で東(新宿区柏木方向)西(杉並区荻窪方向)に通ずるアスフアルト舗装道路で、歩車道の区別があり、車道幅は約一七メートル(歩道の広狭によりごく一部に約一五メートルあるいは約一九メートルのところがあるが、概ね約一七メートルである。)、道路中央部分(若干南寄りのところもある。)に一定間隔でキヤツツアイが設置され、道路中央線とされているが、右中央線以外車両通行区分線は表示されておらず、現場(後記の原告車の最終停止位置)から一メートル弱西側に幅四メートルの南北にわたる横断歩道があり、同所に信号機が設置されている。右道路は、新宿区柏木方面から杉並区荻窪方面へ向けて、現場付近で約一五度の角度で左に緩やかに湾曲し、現場から約一〇メートル西側の地点からは約一〇〇分の三・五の勾配の上り坂であるが、その坂の途中から相当な角度で右に湾曲しつつ、現場から西約三〇〇メートルの通称中野坂上交差点(通称山手通りとの交差点)に達し、ほぼ平坦となつている。また、道路両側には店舗、家屋等が密集しているが、歩道上には約三〇メートルの間隔で水銀灯が設置されていて、本件事故当時夜間で降雨があつたが、現場から新宿区柏木方面に向かつて約一〇〇メートル先までは確実に見とおすことができる。

2  被告車は、車長約六・九メートル、車高約三・五メートル、車幅約二・三メートル、車両重量約五、六トン、最大積載量六・五トンのいわゆる大型ダンプカーであるが、原告車との衝突により前部バンパーが曲損し(バンパー右側半分が被告車の後部方向へ曲つている。)、右前照灯がとれていたほか、右前輪フエンダーが曲損等して、右前部車輪ホイルに接触したため、操向装置は全く機能しない状態で、前示横断歩道の約五ないし六メートル東側の地点に車首を西南に向け、前部両輪は対向(西行)車線上で右約四五度の方向に向き、後部両輪は自(東行)車線上で、車体の約半分は対向車線に進入した状態で停止した。これに対し、原告車は、車長約四メートル、車高約一・四メートル、車幅約一・五メートル、車両重量約〇・九トンの普通乗用自動車(ブルーバード)であるが、被告車との衝突によつて右前部および側部が大破し(右前輪の上方部分から運転者席側ドア部分までのボデイは現形をとどめない程凹損し運転者席ドアは開閉不能、右前輪タイヤは破裂した。)、前示横断歩道東端から約四・五メートルの地点に車首をほぼ北に向けて停止した。(なお、原告車は、被告車と接触後、右の状態で停止したが、さらに、訴外近藤章が運転する自動車に右側部分を衝突された。)

以上の事実と〔証拠略〕によれば、畠山は、事故当日午後六時頃から被告車で土砂を運搬する作業に従事し、新宿方面と西荒川方面を往来していたが、前示時刻頃被告車を空車で毎時約五〇キロメートルの速度で青梅街道を新宿区柏木方面に向け東進して本件事故現場に至つたこと、義人は、同じ頃原告車を運転し、右道路を杉並区荻窪方面に向け毎時五〇キロメートル以上の速度で西進して本件現場に至つたこと(原告車の速度について、畠山は、毎時七〇ないし八〇キロメートルであつたと証言しているが、たやすく採用し難く、右近藤の証言により、少なくとも毎時五〇キロメートルの速度であつたと認めるのが相当である。)その後、原・被告両車は互いの右前部が接触して、衝突し、被告車は衝突の衝撃で曲損したフエンダーが右前輪ホイルに接触し、前輪が右四五度の方向に固定し、操向装置が機能しないまま、前輪部付近を中心に約八分の五(約二二五度)回転して、前示の位置に停止し、原告車は、ほぼ衝突地点で約四分の一(約九〇度)回転して前示の位置に停止したことがそれぞれ認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

そこで、原・被告車の衝突の原因についてみると、被告は、原告車が高速度で被告車の進行車線に進入してきたために本件事故が発生したのであり、事故原因は専ら義人の右通行区分違反の過失にあると主張し、この主張に沿う〔証拠略〕は、畠山の現場における指示説明にもとづいて作成されているので、以下、右指示説明をも含めて供述という。)が存するが、右各証拠をもつてしてはいまだ被告主張の事実が存すると確信を得るに足らず、他に右事実を認めるに足りる証拠はないから、被告は自賠法三条により、原告らに生じた後記損害を賠償する責任を免れ得ないと考える。その理由は以下のとおりである。

前示認定事実によれば、原告車は被告車との接触後荻窪方向車線(自車線)上に停止していたのに、被告車は車体のほぼ前半部分を右車線(被告車からみれば対向車線)に進入させて停止していたのであるから、被告車は原告車と接触するまでは新宿方向車線(自車線)の中央線寄りの処を現場付近道路の湾曲部分に沿つて走行していた(畠山の供述)とすれば、被告車は右接触後に右斜前方に走行し、対向車線に進入した筈であるが(被告車は接触後約八分の五回転したが、右回転自体は中央線を越え、対向車線へ進入する原因とはならない。)、この状況については直接証拠がなく、道路状況、原・被告車の状態等前示の客観的な状況から間接的に推認するほかないが、前示事実にもとづいて検討すると、被告車は原告車との接触の衝撃によつて前輪が右四五度の方向に向き、そのまま固定したと認められるから、前輪の状態を重視すると、被告車は前輪の方向にしたがつて右斜前方に走行し、対向車線に進入したのでないかと推測することができるが、また他方、被告車の前輪は、原告車との接触によつて、その瞬間、かつ、急激に方向を転換して固定したのであつて、このことと事故当時の路面の状態、原・被告車の速度、重量に鑑みると、右前輪は右接触後ほとんど回転しないで、路上を滑走したとの推測も充分可能で、そうすると、道路の湾曲状況、被告車の速度等からして、被告車は左前方へ走行することも考えられ、この場合は、もし被告車が事故前自車線を走行してきたとすれば、中央線を越え、対向車線に進入することはあり得ないと考えられる。すなわち、被告車が前示のような客観状況のもとで、原告車と接触した後(いずれの車線上かはともかく、接触地点が中央線付近であることは前掲各証拠によつて認められる。)、どのような状況で、どの方向に走行するかについては、右のとおり畠山の供述に符合する推測と同時にこれと矛盾する推測をもなし得るけれど、証拠上、右両推測がいずれも客観的(科学的)可能性が有るといい得、そのうえいずれが確率の高いものであるかについて、にわかに断定し難いというほかはない。そうすると、畠山の供述によれば、被告車は接触後右斜前方に走行したことになるべきところが、その可能性の有無は客観的には不明で、現場路上には原告車のタイヤ痕が残されていないこと〔証拠略〕により認められる。)と相まつて、畠山の供述には客観的な裏付けがあるとはいえない。それゆえ、被告車が右接触前から既に対向車線に進入していたために、本件事故が発生したのではないかとの疑問を的確な証拠もしくは客観的な状況にもとづいては否定し去ることはできないのである。

また、畠山の供述には若干の記憶違い(現場付近横断歩道上の信号機はなかつたと供述している。)、後述の自己矛盾供述がみられるほか、〔証拠略〕によれば、畠山は、原告車との接触・停止の直後被告車から降車し、現場付近路上(畠山の証言は、第一回と第二回によつて、畠山が事故後現場南側店舗付近路上にいたか、現場東側の神田川の橋の上にいたか、その証言内容が対立し、いずれとも断定し難い。)にうずくまつたままで、被告車を放置し、中野警察署の警察官による被告車の運転者の捜索の呼びかけにも応ぜず、現場の実況見分(事故当日午後九時三五分から同一一時まで)が終る頃になつてようやく右警察官に自己が被告車の運転者であることを申告したことが認められ、右畠山の行動が、事故に直面した心理的な動揺に起因するものであることを肯認できないことはないが、少くとも一時間余りの間警察官の呼び掛けを知りつつ右申告をしなかつたことは、前示客観的な状況と合せ考えると、畠山の運転行為に過失がなかつたとの供述に疑問をいだかせるに足りるといわざるを得ない。

以上の次第で、事故当時の現場付近の諸状況、畠山の事故後の行動に照すと、本件事故直前において畠山が運転する被告車が中央線を越え、対向車線に進入したのではないかとの疑いが存し、畠山に過失がまつたくなかつたと認めるに足る証拠はないというべく、従つて、その余の点について判断するまでもなく被告は自賠法三条による責任を免れない。(また他方、義人が原告車を運転するについて中央線を越えたために本件事故が発生したとの事実について確信の程度の心証を得るに足る証拠はなく、その他同人に過失があつたと認めるに足る証拠もない。)

三  つぎに、本件事故による損害額を算定する。

(一)  義人の得べかりし利益の喪失による損害

〔証拠略〕によれば、義人は、本件事故当時二六才(昭和一七年四月三日生)の男子で、生前健康であつたから、本件事故にあわなければ以後三七年間就労可能であること、当時東京日産自動車販売株式会社の販売員である根岸長三郎の販売助手として勤務し、昭和四三年一月から同年一二月までの間給料等合計六九万七、〇〇〇円の収入を得ていたから、以後三七年の間、毎年少くとも右記金額の収入を得ることが確実であつたことがそれぞれ認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。ところで、〔証拠略〕によれば、義人は原告両名の長男で、郷里である原告両名の肩書地を離れ、単身で上京し、前示職業に就いていたもので、事故当時は独身であるが、今後妻帯した筈であること、原告両名には義人以外男の子はなく、近い将来義人は原告らの扶養をすべき立場に立つことが確実であることがそれぞれ認められ、これと、義人の収入金額等に鑑みると、義人が生存していれば支出を要する生活費等の必要経費は、右収入の五割相当額を越えないものと認められる。そこで、義人の全収入額から右生活費等の要支出額を控除し、中間利息を年五分の割合で、判決言渡時までホフマン式、その後はライプニツツ複式によつて控除し、義人の得べかりし利益額を事故時の現価として算出すると、六〇五万九、一六一円(円未満切捨)となる。

(二)  相続による承継

〔証拠略〕によれば、義人は、原告溝口両名の長男であるが、死亡当時独身で、子はなかつたことが認められ、右事実によれば、義人の法定相続人は原告両名のみであるから、原告らは、義人の死亡により、法定相続人として義人の得べかりし利益の喪失による損害についての右(一)記載の賠償請求権を法定相続分(各二分の一)に応じて各三〇二万九、五八〇円(円未満切捨)ずつ相続により取得したものと認められる。

(三)  原告らに生じた損害

1  葬儀費用

〔証拠略〕によれば、右根岸および原告らは、義人の葬儀を東京および原告ら住所地において営み、原告らはその費用として合計三〇万円以上を支出したことが認められるが、義人の能示年令、社会的地位等に鑑み、右のうち三〇万円が本件事故と相当因果関係に立つ損害と認めるのが相当であるから、原告らの葬儀費用損害は各一五万円となる。

2  慰藉料

原告らの年令〔証拠略〕により、原告溝口勝見は明治四一年五月六日生、同フジエは同四四年四月八日生と認められる。)、家族構成、義人の家族での前示立場等に鑑れば、原告らが義人の本件事故による死亡によつて少なからぬ精神的痛手を受けたことが推認され、事故態様ほか本件に顕われた一切の事情を斟酌すると、原告らの精神的苦痛に対する慰藉料としては各二〇〇万円が相当である。

(四)  損害の填補

原告らは、本件損害の填補として自賠責保険から三〇〇万円を受領し、各一五〇万円を各損害の填補にあてたことは当事者間に争いがない。

(五)  弁護士費用

以上(一)ないし(四)のとおり、原告らは被告に対し本件事故による損害について、各三六七万九、五八〇円の賠償請求額を有するところ、弁論の全趣旨によれば、被告は原告らに対し右賠償金の支払をしないので、原告らは、弁護士である原告代理人に対し本訴請求手続の遂行を委任し、その費用および報酬として、各三五万円を本判決言渡日に支払う旨約したことが認められ、右事実によれば、原告らは本件事故により弁護士費用として各三五万円の損害を蒙つたものと認められる。

(六)  結論

よつて、原告両名は、被告に対し、各四〇二万九、五八〇円および右の内、弁護士費用三五万円を控除した三六七万九、五八〇円に対する本件事故日の翌日である昭和四四年二月一六日から支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるから、原告両名の本訴各請求を右の限度で認容し、その余を失当としてそれぞれ棄却することとし、訴訟費用について民事訴訟法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言については同法一九六条一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 高山晨 大津千明 大出晃之)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例